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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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いじめ問題への対応 / 鈴木彰典 元 校長

 学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。

 私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。

 さて、大津市の男子中学生がいじめを苦に自殺したことをきっかけに、
平成25(2013年)年6月に「いじめ防止対策推進法」が公布されましたが、
その後もいじめ問題は次々に起きています。

 

当機構にも、いじめ問題への対応に苦慮する学校からの相談(保護者のクレーム対応の相談)が多くなっております。


そこで、今回のニュースレターは、いじめ問題への対応についてお伝えしたいと思います。

 

◆いじめの状況について

 令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する結果概要(文部科学省)によりますと、

小・中・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は、平成25年度は185,803件でした。

 

令和3年度には615,351件となり、約3.3倍増加しました。

これは、積極的にいじめを認知するようになった結果です。

 

いじめの解消件数(解消率)は、令和3年度は493,154件(80.1%)でした。

 

 学年別いじめの認知件数は、令和元年度から令和3年度の3年間では、

どの年度においても小学校2年生が最も多くなっており、

小学校3年生以降は件数が減少し、

小学校6年生と中学校1年生がほぼ同程度の件数ですが、

中学校2年生以降は急激に減少しています。

 

 いじめの態様別状況は、令和3年度は、どの校種においても

「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が最も多くなっております。

 

 いじめの「重大事態」の発生件数は、平成25年度は179件でしたが、

令和3年度には705件となり、約3.9倍に増加しました。

 

校種別では、小学校が314件、中学校が276件、高等学校が112件、特別支援学校が3件で、

小学校が最も多くなっております。

 

◆重大事態について

 いじめ防止対策推進法によりますと、

いじめの重大事態の定義は「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、

心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるとき」

「いじめにより当該学校に在籍する児童等が相当の期間を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認めるとき」
とされています。

 

 重大事態は、
いじめが早期に解決しなかったことにより、
被害が深刻化したケースであることが多いことから、
事実関係が確定した段階で重大事態としての対応を開始するのではなく、
「疑い」が生じた段階で調査を開始しなければならないことを十分に認識する必要があります。

 

 また、
被害児童生徒や保護者から、
「いじめにより重大な被害が生じた」という申立てがあったときは、
その時点で学校は「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、
重大事態が発生したものとして対応することが大切です。

 

児童生徒や保護者からの申立ては、
学校が知り得ない極めて重要な情報を有する可能性があることから、
調査をしないまま、
いじめの重大事態ではないと断言できないことに留意する必要があります。

 

 

 

◆被害者側に寄り添った対応について

 いじめは、被害児童生徒、その保護者、他の児童生徒等からの情報提供や教職員の発見等から明るみになると思いますが、

いじめの情報を受け取った教職員は一人で抱え込まないで、

担任、学年主任、生徒指導主任、管理職で情報共有を図り、対応方法を確認する必要があります。

 

その場合、被害児童生徒や保護者に寄り添った対応に心掛けることは言うまでもなく、

学校の取組内容を被害児童生徒側に事前に説明し、

要望があれば聴き入れ、学校と家庭で連携して対応することが重要です。

 

◆事実関係の把握について

 事実関係を把握するために、加害児童生徒から聴き取りを行う際は、複数の教員で対応したり、

加害児童生徒が複数いる場合は、口裏合わせを防ぐために同時間帯に個別に聴き取ることが大切です。

 

 事実関係が分かりましたら、被害児童生徒の保護者並びに加害児童生徒の保護者に事実を伝えることが必要です。

 

その際、電話で伝えるのか、対面で伝えるのかは、状況によって様々だと思いますが、

基本的には対面で伝える方が良いと思います。

 

◆生徒への指導について

 学校として加害児童生徒への指導が必要になりますが、

被害児童生徒や保護者が何を求めているのかによって、指導の中身が変わります。

 

謝罪だけで良いのか、謝罪以外に反省の言葉を書面で欲しいのか、

何かペナルティを課して欲しいのかなど、求めている内容を丁寧に確認する必要があります。

 

 被害児童生徒側と加害児童生徒側で一応の解決が図られましたら、そこで終わりにするのではなく、

学年や学級でいじめ問題について取り上げると良いと思います。

 

その際は、個人が特定されないよう十分に配慮することは大切ですが、

最近は、被害児童生徒側が名前を出しても良いと伝えてくる場合がありますので、

十分に確認することが必要です。

 

◆保護者のクレーム対応について

 当機構への相談で多いのが、被害者側の保護者の怒りの矛先が学校に向いたり、保護者同士が対立してしまい、学校としての対応に困ってしまうケースです。

丁寧に対応することを心掛けるあまり、終わりのないクレームが続くケースも増えています。

 

 当機構では、状況を十分に確認した上で、以下のような対応策を助言させていただいております。

 

 ①クレームの話をお聴きする(保護者同士の話し合いを行う)際の目的と時間を明確にする。

 

 ②今回は、どのようなことについて話をするのかを明確にする。
当日、関係のない話が出た場合は、別の機会にお話を聴くことを伝える。

 

 ③言葉を荒げたり、感情的にならないように、事前に伝えておく。
当日、開始前にも再度伝え、言葉を荒げたり、感情的になった場合には、中止にすることを伝える。

 

 ④事前にQ&Aを作成し、司会の先生、説明する先生、保護者役の先生でリハーサルを行い、改善を図って当日を迎える。

 

 ⑤高圧的な保護者と話をする際には、可能であれば録音する
(保護者の許可を取らずに録音しても、そのことが裁判で問題になるケースはほとんどない)。
また、記録をきちんと残す。


警察に相談したり裁判になる場合には、証拠になる。

 

 以上のようなことを行うことで、クレームがそれ以上に拡大しないことを願っております。

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典


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