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GW明けの注意点/ 鈴木彰典 元 校長

学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。

 

さて、令和6年度が始まり1ヶ⽉が経ちました。

どの学校(園)も膨⼤な業務を抱え、怒涛の⽇々を過ごしたことと思います。

 

GW明けは、4⽉中には⾒られなかった問題が次々に表れるようになります。

今号では、GW明けに起こりやすい問題に焦点を当てて、留意すべき点をお伝えしたいと思います。

 

◆不登校(園)への対応

 新年度になり、新しい環境に慣れるために、かなり無理をした児童⽣徒等がいたと思いますが、GWで緊張感が緩み、GW明けは4⽉の疲れが出て来る時期です。

登校(園)しぶりが始まったり、不登校(園)になる児童⽣徒等が増えます。

 

 特に、新⼊⽣(園児)は、初めての環境の中で過ごし、精神的にもかなり負担がかかった⽣活を送ったことと思います。

また、不登校(園)傾向の児童⽣徒等は、何とか4⽉は登校(園)したものの燃え尽きて登校(園)意欲が起こらなくなることもあります。

 

このようなことから新たな不登校(園)が⽣まれる可能性があります。

 

 家庭環境によるもの、友⼈関係によるもの、いじめによるもの、発達に課題を抱えることによるもの、教員との関係によるもの等、不登校(園)は様々な要因が絡み合うため、⼀筋縄では問題解決しないことが多くあります。

 

 状況が⼀⼈⼀⼈異なりますので、実状を踏まえて適切に対応することが重要です。

担任が家庭と連絡を取り合ったり、家庭訪問等を⾏って対応することが多いと思いますが、教育相談部会等で情報共有を図り、担任を⽀援する体制を構築しながら対応することが⼤切です。

 

その際、学校(園)だけで対応することが難しい場合は、関係機関(教育相談センター、児童相談所、医療機関等)、スクールカウンセラー、スクール・ソーシャルワーカー等と連携を図ることも必要になります。

 

 GW明けは、適切に対応しないと不登校(園)になる児童生徒等が増加しますので、個々の状況に応じて対応することが求められます。

 

◆学級がうまく機能しない状況への対応

 いわゆる「学級崩壊」のことですが、4月のクラスづくりの段階で、ルールをしっかり定着させないと正義が通らないクラスになります。

授業妨害、器物破損、いじめなどが起き、望ましい集団を構築することが難しくなります。

 

そして、心が荒んで人間不信(特に教師不信)になり、担任や学校(園)に対する期待が薄らいでいきます。

 

 担任が⼀⼈で抱えてしまわないようにするためにも、お互いにアンテナを⾼くして情報を素早くつかみ、迅速に対応することが必要です。

今は、どのクラスも「学級崩壊」が起こり得ると捉えて、対応すると良いと思います。

 

⼈的に余裕があれば、複数の職員で授業を⾏ったり、教科担任制を取り⼊れた授業を⾏い、多くの⽬で児童⽣徒等を観察して「学級崩壊」の未然防⽌に努めると良いと思います。

 

◆いじめ問題への対応

 新たな集団(クラスや部など)の中で、いじめ問題が新たに起きたり、昨年度のいじめ問題が継続・拡⼤したり、いじめの加害者と被害者が⼊れ替わったりするなど、いじめが原因で様々な問題が起きることがあります。

 

 いじめかどうか判断が難しいケースもあると思いますが、⾒分けがつかない場合は、いじめが起きているという前提で対応した⽅が良いと思います。

最初の段階で、学校(園)はいじめとして認識していないと保護者に伝えてしまうと、後でいじめが発覚した場合に、その後の対応に苦慮することが予想されるからです。

 

 今、SNSが絡むいじめ問題も多くなっていますが、学校では把握しきれない部分があるため、学校が情報をつかんだ時には問題が⼤きくなっていることがあります。

事実関係をきちんと把握し、保護者と連絡を取りながら適切に対応することが必要です。

場合によっては、警察などの関係機関に相談することも必要になります。

 

 最悪のケースとして、いじめが発端で命を絶つことも起こり得ますので、組織で対応することが求められます。

特に、GW明けは要注意です。

 

また、状況によっては、緊急保護者会やマスコミ対応等を行う場合もあります。

荒れないようにするためには、目的やルール等をしっかりと決め、リハーサルを行って臨むことが大切です。

 

教師のメンタルに注意

 

 文部科学省は、昨年12月末に令和4年度に精神疾患を理由に病気休職した教職員が6,539人で過去最多になったことを公表しました。

年代別に見ると、20代では在職者に占める割合が2.02%(50人に1人の割合)となり、他の年代と比べると精神疾患による休職・休暇の割合が高かったとのことです。

 

また、休職発令時点の所属校での勤務年数を見ると、2年未満で47.8%と約半分を占める一方、6年以上でも9.7%に上ったとのことです。

さらに、休職発令後の状況は、令和5年4月1日時点で「復職」が39.9%、「引き続き休職」が40.7%、「退職」が19.4%になったとのことです。

 

 20代には、初めて教員になった方や初めて担任を持った方などがいると思います。

教員としての生活スタイルが確立されていない時期ですので、教材研究に時間がかかったり、学級経営や生徒指導等で悩む日々が続くと思います。

 

特に、4月は取り組むことが多いため、つい無理をしてしまい、気を張って取り組んだ疲れがGW明けに表れ、心身に不調を来すことが考えられます。

 

また、4月に他校から来た方は、職場の雰囲気や学校を取り巻く環境等に慣れるのに気疲れしたり、相談事があっても気軽に相談できる方が見つからず、心身に不調を来すことが考えられます。

 

さらに、4月に育児休業や病気休職(休暇)などから復帰する方が、教職員の構成メンバーが変わったり、保育園に子どもを迎えに行くなど生活スタイルが変わり、休みに入る前と比べるとストレスが溜まりやすくなり、心身の不調を来すことが考えられます。

 

そして、GW明けから運動会(体育祭)や校(園)外行事などの取組が本格的に始まる学校(園)があると思います。

4月の疲れが残っていたり、4月の慌ただしさとは違う慌ただしさが加わり、体調に異変が出やすくなり、心身に不調を来すことが考えられます。

 

 どの時期に精神疾患で病気休職(休暇)に入るか、人によって様々だと思いますが、心身の不調を訴える方が出始めるGW明けは要注意です。

管理職、学年主任、養護教諭、衛生管理(推進)者などが注意を払い、教職員の体調を把握することが必要です。

 

早めに産業医に相談したり、心療内科を受診することなどを勧め、心身の不調が深刻にならないようにすることも大切です。

 

 1年間を通して、休み明けは注意が必要になりますが、GW明けは、その後の活動を円滑に進めるためにも細心の注意を払うことが求められます。

心身の不調は本人が言わないと気がつきにくいものですが、表情や口調、身だしなみ、机上の整理整頓など、普段と様子が違うサインが表れたら、本人に声をかけて確かめると良いと思います。

 

しかし、本人に自覚がない場合もあるかもしれません。その場合は、本人と話をしながら心身の状態や今後のことを確認すると良いと思います。

 

GW明けをスムーズに乗り越え、各学校(園)の本格的な教育(保育)活動が展開されることを願っております。

 

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典


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