学校での事件事故発生時の対応
もし、あなたの学校で、いじめによる生徒の自殺、教員の不祥事など事件が起こったら……。考えたくないことかもしれませんが、「いつか必ず起きる」という前提で、万一の場合の対応をどのようにすればいいか、あらかじめ考えておくことが必要です。起こった事件をなかったことにすることはできませんが、その影響を最小限にとどめることは可能です。そのためには、適切な初期対応が大変重要です。
今回は、事件が起こったときの備えについてお話ししましょう。
迅速な情報公開が鉄則
学校内で事件が起こったら、だれでもが「できれば知られないですませたい」と思うのではないでしょうか。危機管理の法則からすると、それは全く逆効果です。隠すのではなく、「できるだけ早く公開する」ことが、事件の影響を最小限にとどめるための鉄則です。
事件が起こったときに、学校が最も恐れるのは大きく報道されることでしょう。であればなおさら、
報道される前に、学校のHPで情報を公開してしまうことです。そうすることで、報道価値が下がります。公開内容や方法には注意する必要がありますが、HPで誰でも見られる情報には、マスコミも価値を感じにくくなるものです。
保護者や子どもへの説明も、早ければ早いほどいいでしょう。その際には、保護者や子どもの動揺を防ぎながら、しっかりと必要なメッセージを作る必要があります。
また、マスコミの報道よりも前に伝える努力をするべきです。
対策チームを作る
情報公開をするためには、正確な情報を集める必要があります。そのためには、事件が発覚したら、すぐに対策チームを作ります。事件のインパクトや学校形態に応じて、学校長や法人事務局長、危機管理責任者等がリーダーシップを発揮して、メディア担当窓口、保護者への連絡、在校生から情報を集める、情報を記録する係など、担当を決めて指示を出します。
対策チームがきちんと機能するためには、目標を明確にしておく必要があります。
事件が起きたときに解決しなければならない問題は、①感情と②事象の二つです。
いじめの場合、感情は、被害者と保護者の感情、加害者と保護者の感情、ほかの子どもと保護者の不安、社会の不信感などがあります。事象は、被害の回復や、二度といじめが起きないように対策を立てることです。 これらの解決を目標として、メンバーでしっかり共有しておきましょう。そうすれば、その場の雰囲気や目先のことに流されることなく、各自が目標に向かって行動や発言をすることができます。
情報の収集・整理をする
情報が集まったら、それを整理していきます。記録係が、ホワイトボードにマインドマップの要領で、何が起こったのか、今何をしているのかを書き込み、目に見える形にしていきます(前頁図参照)。これによって、事件の全体像を把握することができ、情報の共有ができます。
5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように)を基本に整理して記入し、あたらしい情報が入ってきたら、書き加えます。これにより、わかっていること、わかっていないこと、解決していること、していないことが明確になります。
ポジションペーパーを作成
次に、ホワイトボードに書かれたことをもとにして、ポジションペーパーを作ります。ポジションペーパーとは、ある問題が起きた場合に、事実関係を客観的に示す文書のこと。情報を一元化し、憶測や誤解を防止するのが目的です。これをもとに、HPに情報を公開したり、記者会見や保護者説明用の資料を作っていきます。
現時点でわかっていることを中心に、いつからどんな活動を開始して、今後誰が何をいつやる予定なのか、問題解決のために動き出している事実を具体的に記載します。まだわかっていないことも、「調査中」として記載し、漏れを防ぎます。
情報公開の意味とは
情報公開のポイントは、「謝罪・説明責任・再発防止」など、社会的責任を果たすことです。きちんと責任を果たせば、沈静化に向かいます。
記者会見の有無やその事件の内容にも左右されますが、マスコミに大きく取り上げられることが続くのは、事件を隠そうとしたり、言い逃れをしようとする、つまり社会責任を果たそうとしない姿勢がみられるときです。できるだけ早く謝罪し、事件の経緯を説明したり、再発防止のためのアクションを起こしている場合は、ダメージも小さいのです。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。