令和5年中における犯罪概況/ 鈴木彰典 元 校長
学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。
さて、今回の学校リスクマネジメント通信は、夏休みを迎えるにあたって令和5年における少年犯罪の状況等を抜粋してお伝えしたいと思います。
◆刑法犯認知件数等(都内)
刑法犯少年の検挙・補導人員は3,347人で、前年同期と比べて305人(10.0%)増加しました。
強盗、ひったくり、オートバイ盗などの街頭犯罪の認知件数は3万1,895件で、前年同期と比べて6,077件(23.5%)増加し、街頭犯罪における少年の検挙・補導人数は510人で、前年同期と比べて92人(22.0%)増加しました。
特に街頭犯罪のうち、総検挙人員に対して少年の検挙・補導人員の占める割合が高い罪種は、オートバイ盗(88.9%)と部品ねらい(52.9%)でした。
◆少年犯罪の状況(都内)
刑法犯少年の検挙・補導人員は、平成22年以降減少傾向で推移していましたが、令和4年から増加傾向に転じ、令和5年は自動車盗、オートバイ盗、自転車盗等の街頭犯罪が増加しています。
オレオレ詐欺等の特殊詐欺は、検挙・補導された少年は100人で、前年同期と比べて53人減少し、少年が占める割合も15.0%減少しました。
しかし、SNSで犯罪実行者を募集する、いわゆる「闇バイト」の手口による強盗事件等が増加しており、大きな社会問題となっています。
受け子(現金などを受取る役)や出し子(ATMで現金を引き出す役)を募る「闇バイト」に応募した高校生ら青少年が特殊詐欺や強盗に加担する事件が後を絶たないことから、警察と連携して「闇バイト」の危険性を周知して、絶対に特殊詐欺に加担させないことが必要です。
◆薬物事犯の検挙状況(都内)
薬物事犯で検挙・補導された人員は231人で、前年同期と比べて87人(60.4%)増加しています。
学識別では、有職少年65人(28.1%)、高校生48人(20.8%)が多く、中学生5人(2.2%)も検挙されています。
◆少年事件の検挙・補導事例(全国)
- 高級腕時計店に侵入して脅迫するなどし、バールでショーケースを叩き割り、高価な腕時計などを奪って逃走した高校生を含む少年4人を強盗罪及び邸宅侵入罪等で検挙。
- 母親を刃物で切り付け、殺害した触法少年を殺人罪で補導。
- SNS上のトラブルが発端となり、公園等において被害者らを取り囲んで顔や腹部などを殴る暴行を加え、全身打撲などの傷害を負わせた高校生ら少年3人を傷害罪で検挙。
◆少年の福祉を害する犯罪の検挙事例(全国)
- オンラインゲームで知り合った男子生徒に対して、ゲーム用機器を供与して車両内でわいせつ行為をした成人男性を児童買春・児童ポルノ禁止法違反で検挙。
- 女子生徒に出会い系サイトを利用して募った客を引き合わせ、ホテルでわいせつな行為をさせた無職の女性を児童福祉法違反で検挙。
- 女子生徒に卑猥な格好をさせて盗撮し、その動画とともに同生徒の個人情報を仲間に提供した学習塾講師を性的姿態撮影等及び個人情報違反で検挙。
刑罰法令に触れる行為は
絶対にダメ!
◆ネットトラブル防止に向けて
今やインターネットなしで生活を送ることは考えられません。
しかし、ネット社会には危険なことが潜んでいることを忘れてはなりません。
ネットトラブルを回避するために必要なことをご紹介いたします。
迷惑行為や誹謗中傷は利用規約で禁止されている! |
リアルでもネットでもやってはいけない行為は一緒です。
都合が悪い人や情報を排除するのではなく、上手な使い方を教えましょう。
ネットやSNSへの書き込みを軽く考えない! |
単なる脅しや悪ふざけで実行する気がなくても脅迫めいた書き込みは犯罪になる恐れがあります。
犯罪行為には警察が動くため、悪ふざけでは済まされません。
未成年者でも発信責任は問われます。
SNS等で知り合った人は
|
リアルな生活だけでは出会えないような人と知り合えるようになった今、男女ともに投稿内容の過信は危険だということを再認識しましょう。
◆薬物乱用防止に向けて
今や恐ろしい薬物がインターネットや携帯電話等の普及によって、誰にでも手に入ると言われるほど急速に私たちの身近に忍び寄っています。
「一度だけなら大丈夫!」は間違いです。
法律によって薬物の乱用(1回使用でも乱用)、所持などは厳しく禁止されています。
また、薬物を乱用して精神的に不安定になったり、依存症になることで大切な家族や友人に迷惑をかけてしまいます。
さらに、犯罪など社会に様々な悪影響を及ぼします。
薬物は魔物であることを忘れてはいけません。
◇◇◇夏休みを迎えるにあたって◇◇◇
児童生徒等にとって待ちに待った夏休みとはいえ、成長期の多感な年ごろを迎える子を持つ保護者や先生方にとっては非常に心配な時期でもあります。
過去に、言葉遣いや服装の乱れなどの「兆し」を見つけ、早期の対応が大切だということを発信したことがありますが、夏休み明けには家出や非行が多いのが実態です。
夏休み前に、夏休み期間中の過ごし方について、児童生徒等に指導するとともに、保護者への啓発を図り、非行防止に努めていただきたいと思います。
また、日頃から家庭との連携を図り、心配な児童生徒等の状況把握に努め、夏休み明けの生活がスムーズに開始できるような体制づくりを推進していただければと思います。
~「家庭や学校が好きな子」とは~
自分は「家族の一員」「クラスの一員」と思えたら、家庭や学校が好きになり、誰に言われなくても家庭や学校のルールを守りたくなります。 子供にとって、家庭や学校がかけがえのない居場所と思える環境づくりをしましょう。
家庭や学校が子供にとってかけがえのない場所となるためには、明るい雰囲気づくりや自分のやるべき役割があると、「自分は役に立っている」という気持ちが強まり、一体感も増してきます。 また、休み時間に友達と仲良く遊んだり、部活動(クラブ活動)等に一生懸命取り組んだりすると、学校がますます好きになります。
活発な子、おとなしい子、勉強が得意な子、勉強が苦手な子など様々ですが、子供の性格や趣味に合った居場所が見つかるよう、子供と一緒に考えていきたいものです。
家庭や学校が居場所となるよう 手助けをすることが大切です。 |
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。
編集者 マネジャー 上原和吉
元警察官幹部。警視庁新宿警察署生活安全課(課長)、警視庁(本部)生活安全部少年事件課(管理官)等を歴任。
学校事案も数多く担当してきた経験を生かし、学校リスクマネジメント推進機構のスタッフとして学校の支援を行っている。