学校リスクマネジメントで大切な3つの考え方
学校には様々なリスクがあり、その対策も講じていると思います。
怪我、地震、病気、事故、感染症、クレーム、いじめ、パワハラ、体罰、暴言、不正行為等々・・・
挙げればきりがないのですが、リスクは出来るだけ事前に漏れの無いように想定しておきたいところです。想定していないリスクが顕在化した場合は事前に頻度や影響度を下げる対策がとれないため、後手の対応になり影響が拡大しやすいのです。
今回の学校リスクマネジメント通信はリスクマネジメントで大切な3つの考え方についてお伝えしたいと思います。
◆ リスクコミュニケーション
学校で実施しているリスク対策は、そもそも具体的にどのようなリスクを想定したものなのか明確になっているでしょうか?何となくざっくりとしたイメージで対策を決めていないでしょうか?例えば、地震に関連するリスクは多岐に及びます。校舎倒壊のリスク、火事発生のリスク、避難場所での犯罪リスク、余震による校舎の倒壊リスク、瓦礫の下敷きになってしまうリスク、ケガによる大量出血のリスク、食料枯渇リスク、飲料枯渇リスク、通信障害のリスク、死傷者発生リスク等々・・・
勿論、これ以外にもたくさんのリスクがあると思いますが、大切なことはなるべく多くのリスクを想定内にしておくという事です。そのために効果的なことが「リスクコミュニケーション」です。
これは学校を取り巻くリスクについて、教員や行政、専門家、地域住民、保護者、生徒等のステークホルダーで意見を出し合い、相互に意思疎通を図るコミュニケーション手法のことです。様々なリスクを想定するためには学校だけでは不十分です。リスクは立場や置かれている状況等によって捉え方は様々です。リスクコミュニケーションをやると盲点が見えてきますので、洗い出されたリスクを管理下に置けるように書面化していきます。まずは学校内の教職員だけで実行してみるのも良いと思います。リスクコミュニケーションは「何がリスクなのかを知る作業」です。
◆ リスクコントロール
様々なリスクがあることが分かったら、それぞれのリスクが顕在化する頻度と顕在化した場合の影響度(ダメージ)を評価してリスクの大きさを数値化します。 数値が大きいリスクから予算を取り、数値を下げられる対策を実行していきます。
これをリスクコントロールと言います。
対策の種類は過去のニュースレターでも述べていますが、以下の切り口で考えると分かりやすいと思います。
〇回避=リスクが高いのでその活動を行わない
〇低減=発生頻度を減少させる対策を講じる
〇軽減=影響度を減少させる対策を講じる
〇容認=小さいリスクはコントロールせずに様子を見る
◆ 派生リスク
リスクを洗い出し、それを対策に落とし込んでも、漏れはあるものです。特に気を付けなければならないことが、「派生リスク」です。派生リスクはその対策や出来事に関連して生じてくる別のリスクのことであり、直接的なリスクより影響が大きい場合もあるので注意が必要です。
この考え方を知らない場合、リスク対策をすればするほど、また、発生する日常の出来事の後に、思いもよらない別のリスクが顕在化してくることになるため、想定外の影響が拡がってしまうことがあります。リスクコミュニケーションや書面化の時に派生リスクを想定することが大切です。
例) 個人情報漏洩対策 個人情報の漏洩対策の一環としてパスワードを手動で12桁に設定した。
●想定される派生リスク
①パスワードを覚えられず、教職員の業務が停滞してしまうリスク
②パスワードを付箋に記入してパソコンへ貼り付ける情報漏洩リスク 等
※派生リスクを最小化する対策としては、自動でパスワードを記憶させるシステムや顔認証、指紋認証、覚えやすく強度が高いパスワードをレクチャーする等の方法を活用する。
例) パワハラ防止対策
パワハラ防止対策の一環として教職員研修会を実施。
●想定される派生リスク
①管理職の適切な注意を教員がパワハラだと主張・悪用されるリスク
②生徒指導への委縮が生じてしまって指導力が低下するリスク 等
※派生リスクを最小化する対策としては、研修内容に何がパワハラで何がパワハラではないのか?という基準をしっかりと盛り込んでおく。
例) 生徒指導 女子生徒の着替えを盗撮していた男子生徒を見つけ、その場で厳しく指導した。
●想定される派生リスク
①指導直後にパニックを起こし自宅に帰らずに行方不明になってしまう
②指導直後、教員が目を離した隙に屋上に駆け上がり飛び降りてしまう
※これらの派生リスクを最小化する対策としては、指導直後から保護者に引き渡すまで、生徒を一人にせず目を離さないようにする。
このような派生リスクまで想定している学校と、そうでない学校とではリスクマネジメントレベルに大きな差が生じてしまいます。
先の先を読んで、想定外を想定し、事前にコントロールすることが大切です。
この機会に是非考えてみて頂けると幸いです。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。