対策の考え方
学校には様々なリスクが存在しています。
軽微なものから屋台骨を揺るがす大きなもの、また、児童生徒、 学生等のメンタルに甚大な影響を与えかねない問題もあると思います。
これらのリスクに対し、学校や担任は直ぐに対策を 取ると思うのですが、漏れの無い対策を実行するため にはどのような切り口で考えていけばよいのでしょうか。
今回のニュースレターは、2つの事例から対策の考 え方を検討していきます。
演習用の記入欄も設けました ので書き込みながら読み進めると理解が深まると思い ます。
対策の考え方は次の4つです。
通常、これらの選択肢で対策を検討する際には、 事前にリスク評価というプロセスを経てい るのですが、 今回は紙面の都合上、このプロセスを省いておりますので予めご了承下さい。
◆教員の厳しい生徒指導後に生徒がパニック状態になり自死を選択してしまうリスク(指導死)
<回避>
対策の目的=生徒指導後の自死のリスクを回避する
●例:生徒指導をしない←現実的ではないため回避の選択肢はとらない
<低減>
対策の目的= 生徒指導後の自死の発生頻度(確率)を減らす
●例:教員間で自死のリスクが高い案件や要配慮生徒の情報を共有し、自死誘発の可能性がある方法での指導をしない
<軽減>
対策の目的=自死後の影響度を減少させる対策を講じる
●例: 自死発生後における他の生徒の後追いを防止するために、リスクの高い生徒をフォローして影響の広がりを減らす
<容認>
影響が小さいリスクはコントロールせず容認する
●例:当該リスクは影響度が小さくないため、容認の選択肢は取らない
ここでは対策の例は一つしか挙げていませんが、その他の対策を是非考えてみて下さい。
リスク容認という選択肢はこの指導死のリスクに対しては適切な対策ではありませんが、そもそもこのリスクに気付け ていなかった学校は結果的に容認状態になってしまっていると思います(対策を講じていない)。
まずは、リスクの洗出し、評価を行い、生徒指導上のリスクを見える状態にして優先順位を付けることが大切です。
◆体育祭の棒倒しで生徒が頭をグラウンドに強打して大けがを負ってしまうリスク
<回避>
対策の目的=リスクが高すぎるのでその活動は止めよう
●例:棒倒しで生徒が頭を強打すると死亡事故に繋がるので今回は中止しよう
<低減>
対策の目的=怪我の発生頻度(確率)を減らせる対策を講じよう
●例:試合の数を4回から1回に減らして事故の発生確率を下げよう
<軽減>
対策の目的=怪我発生時の影響度を減少させる対策を講じよう
●例:ヘルメットを被せることでグラウンドに倒れた際の頭のダメージを減らそう
<容認>
対策の目的=影響が小さいリスクは対策をしないで容認しよう
●例:頭からグラウンドに倒れてもさほど影響はないので様子を見よう
これらのリスク対策を見て如何でしょうか。
上記では対策の例は一つしか挙げておりませんが、その他の対策はいくつもあるので、考えてみて下さい。
<容認>という選択はこのリスクに対しては適切な対策でしょうか?これも考えてみましょう。
※低減手法が軽減手法に繋がる場合やその逆もあります。
(両方に効果がある対策もあります)
学校リスクマネジメントの対策の考え方は様々なリスクに応用が可能です。
是非、自校で対策を検討する際に、上記4つの切り口を活用してみて下さい。
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集し、大加筆したものです。