手の込んだ事案が増えている
今年に入り、深刻な相談を数件いただきました。いずれもマスコミに露出がある、事案だったのですが、理事長・校長先生はじめ、管理職の先生方が真剣に一丸となって対応しているので、どの事案も最悪の状態には至らないと思います。
私からは、学校が危機発生時に絶対にやってはいけない選択をしないようにアドバイスをさせて頂きました。
昨年、当機構に相談があったトラブルの傾向を振り返ってみると、理不尽で手が込んでいる クレームが非常に多かったという印象があります。
理不尽と言うのは自分(保護者)が最優先ということであり、手が込んでいるという意味は、戦略的ということです。
理不尽なクレームは以前からよく相談があったのですが、手が込んでいる(戦略的)ケースはさほど目立たなかったのです。
これは一昨年と明らかな違いがあります。
このような傾向は今年も続き、さらに多くなると感じています。
◆ 教員不祥事といじめをめぐる事例 ◆
昨年末に、前年度(2016年度、文部科学省統計資料)の教職員の不祥事の処分に関する統計が公表されました。
それによりますと、公立小中学校の教職員がわいせつ行為やセクハラ行為などで処分を受けたケースが最も多く、 しかも教え子を相手にしたケースが最多だったとのことです。
一方、いじめ防止に向けて適切な対応を取らなかったなどとして処分された教職員は28名(前年プラス 20名)、体罰を理由に処分されたのは654名(前年マイナス67名)で、その中でも「素手で殴る、たたく」が358名と最多でした。
いじめ問題の特異事例として、某県下で発生した生徒が自宅で自殺した問題で、市が設置した第三者による調査委員会において「いじめが大きな一因となって自死を選択した」といじめと自殺の因果関係を認める調査結果が公表されました。
同委員会によると、同生徒はクラス数人による人格否定、からかいなどからストレスを抱え、 校内アンケート調査でもいじめを訴えていたそうです。
こうしたことから、教諭らはいじめた生徒への指導を行い、一方のいじめられた生徒も明るく学校生活を送っていたため、いじめが解消したと判断していたそうです。また、単なる「からかい」で、いじめではないと事態を軽視する教職員が存在したことが問題の拡大を招いたほか、いじめに関する情報を教職員同士で共有し、適切な助言をしていなかったことが問題を深刻化させていたようです。
いじめが起きた背景については、教職員の業務負担が重すぎたことから、生徒へ注意が行き届いていなかった、などと結論付けています。
これは公立学校のケースなのですが、教育現場をめぐる問題は、公立、私立問わず時代とともに変遷し、現代ではいじめ、自殺、登校拒否、保護者クレーム対策などで苦慮されるケースが増えています。
◆短時間で安心感を提供できる体制があります◆
ところで、去年受けましたご相談の中に、次のような事例がありました。
障害を持つ児童が他の児童と喧嘩となり、けがをして救急車で病院に運ばれてしまったのですが、その保護者から、「教員が監督責任を怠ったためにけがになってしまった。後遺症が残った場合、教員や学校に補償を求める」との訴えがあった、という内容です。
学校からこの案件についてご相談を受け、私たちは以下のような協議を行い、今後の方針や話の進め方をアドバイスさせていただきました。
① 元警察官と事実確認・証拠保全及び図式化の具体的な方法や警察対応を協議
② 弁護士2名と将来の法的リスクの予測と低減方法を協議
③ 近日実施予定の臨時保護者会の炎上防止策などを協議
④ 被害児童保護者のタイプ分析と対応方法を協議
⑤ マスコミ接触時の懸念事項と注意点について協議
⑥ 協議結果を集約
⑦ 校長先生に今後についてのアドバイスを実施
ここまでに要した時間はタイミングが良かったこともあり約1時間です。
学校にとって非常にリスクの大きいトラブルでしたが、たった1時間で今後のリスクを最小化するための対応方針や多方面からの具体的な解決策を提供することができ、校長先生からは感謝の言葉を頂戴いたしました。(相談者の了承を得て掲載しています)
これは私立学校の事例なのですが、通常であれば、最大でも顧問弁護士だけへの相談になり、得られるアドバイスは②のみで終わっているはずです。また、公立学校の場合も近いものがあると思います。
つまり、全方位的なリスク対策が網羅されない可能性があるということです。
先にも述べたとおり、当機構では、今年は例年になくトラブルが増えると予想しております。学校は手の込んだ事案、複雑な事情が内在する事案等、様々なトラブルの発生に備える必要があると思います。
危機は突然訪れるのです。
本年も少しでも皆様のお役に立てるような情報を発信してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。