臨時保護者会の留意点
先日、私に次のような相談がありました。教員が盗撮で逮捕されたので臨時保護者会を開催して保護者に説明をしたいとのこと。
状況によっても異なりますが、何のための保護者会なのかを始めに決めることが大切です。
まずはそこを決めること。そして、それを実現するための方法を設計し実行していきます。
今回は臨時保護者会のポイントをお伝えします。
●事実を整理する
まずは事実を整理することが大切です。よくあることですが、整理をしないで説明をすると、事実と見解が混ざってしまうからです。そうなると保護者は矛盾を感じますので、それが怒りや不安感に繋がってしまいます。そして、その感情が他の保護者へ伝播してしまい保護者会が荒れてしまうのです。
学校側も意図して矛盾を招いている訳ではないのですが、どうしても事実ではなく希望的観測に基づいて発言してしまいがちです。
事実をしっかり整理しておくことで、冷静な対応が出来ると思います。
整理の仕方は5W1Hが基本ですが、これを基本に枝葉を付けていくことがポイントです。
●進行係(司会)が重要
保護者会の進行に際し、進行表を作成しておくことが大切です。整理の仕方は事前に会の流れがイメージできるため、会を設計しやすいのです。
また、想定した進行から議事がそれてきた場合や会が荒れてしまった時の司会の捌き方も大切です。
一つのヒントですが、保護者会の冒頭部分で、
<本日は○○の件につき皆様にお集まりをいただきました。大変ご迷惑をお掛けした上で誠に恐縮なのですが、皆様お忙しい中、お集まりいただいておりますので、本日は○○の件についてのご説明、ご質問の場にしたいと思います。
別のご要望等がある場合には保護者会の終了後に個別に全てお受けをいたしまので、何卒、ご協力の程を宜しくお願い申し上げます。
それでは保護者会を開催させて頂きます・・・・>
などと事前に広報しておくと、趣旨に反した状況になった時に捌きやすいと思います。
上記はあくまでも一例ですが、事案に併せて柔軟な対応が必要です。
また、上述の説明をしても、保護者が学校に対して不平不満を言ってくることも想定できますが、ある程度はいわゆるガス抜きのために許容しなければならない状況もあると思います。
●Q&Aを作成する
質疑応答に備えて、Q&Aを事前に作成しておくことも大切です。これは保護者の視点に立って考えると良いと思います。つまり、学校側が答えにくい問題を自分で準備してその回答方法を自分で見つけておくということです。
どれだけ自分を困らせられる質問を考えられるかが大切です。
(例、Q:これはいじめですよね。→A:いじめも含め、全ての可能性を否定せずに調査をしていきます。など)
※きちんとした調査もせずに、<いじめではない>と答えると危機が大きくなる傾向があるので注意が必要です。
●リハーサルをする
すでに進行表とQ&Aがあると思います。それを確認しながら数名でリハーサルを行います。他の教員が保護者役となって質問をしてもよいでしょう。これに回答することでQ&Aをブラッシュアップしていきます。
ここでのポイントは、何を話したか?より、どのように話したか?ということです。話した内容も大切ですが、話し方の方がより大切なのです。上から目線、反省の色がないなど保護者から反感を持たれる要素はないかもリハーサルで確認しましょう。
リハーサルでは参加者の感想をフィードバックするようにして下さい(たとえば、「不安です」と言われたら、「不安にお感じなのですね」と、相手が言った言葉を繰り返す)。
●傾向を知る
臨時保護者会では複数の保護者が結託し、学校を責め立てるケースがあります。これはどこの学校でも起こることなので、うちの学校では大丈夫といった類の問題ではありません。
特に心配がない学校でも情報として知っておく必要があります。
とくにマスコミに出そうな問題が発生した時にこういった傾向があります。
具体的には学校に対して大声で怒鳴る保護者が進行の主導権を取り、別の保護者がそれを煽ります。
また、同調して他の保護者に拍手を促す別の保護者もいるのです。つまり、配役が事前に決まっているということです。
保護者には様々なグループがあり、学校が気が付かないケースが殆どです。こうなると学校の主導権が奪われてしまうため、無理な要求を付きつけられやすくなってしまいます。そして自分の子どもを特別視することを求めたり、自分達の主義主張(政治観や宗教観)を押し付ける場合もあるのです。
これは昔の総会屋の手口にとても似ています。総会屋とは会社の株式を保有し、株主としての権利を濫用して会社に金品などを不当に要求する者のことをいいます。
私は昔、企業の危機管理を支援していたことがあるのですが、総会屋対策もやったことがあります。
総会屋の大半は反社会的勢力若しくはその関係者でした。つまり、暴力団若しくはそれに近い存在です。
現在は法改正になったため、以前に比べてかなり下火なのですが、昔の株主総会は怒号が響き渡り、それを煽るもの、なだめるもの、仲裁するものなどがいました。そして、その全てが裏で繋がっていたのです。
企業は総会が荒れることを恐れて、仲裁役の総会屋に水面下でお金を渡します。そうすると、ある程度怒号が抑えられたのです。しかし、そのお金はこの“劇団員”全員に渡り、按分されるのです。
まだまだお伝えしたいことがあるのですが、紙面の都合で伝えられないので残念です。
これらのことが頭に入っているだけで、かなり臨時保護者会はしやすくなるのではないでしょうか。
是非お役立てください。
この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。