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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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警察と連携したいじめ対応

 当機構への相談の約1/4がいじめ問題を起因とする保護者対応に関する相談ですが、被害者側の保護者の怒りが収まらなかったり、被害者側と加害者側の保護者がトラブルになるなど、対応に苦慮するケースが多くあります。

今号では、学校だけでは解決が難しい場合などにおける、いじめ問題への的確な対応に向けた学校と警察との連携についてご紹介したいと思います。

 

◆いじめの状況について

 令和4年度の児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する結果概要(文部科学省)によりますと、小学校・中学校・高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数は681,948件となりました。

令和3年度は615,351件でしたので、66,597件(10.8%)増加して過去最多になりました。

いじめの解消件数(解消率)は525,773件(77.1%)となりました。

 

令和3年度は493,154件(80.1%)でしたので、対応件数は増加しましたが解消率は低下しました。

これは、安易にいじめを解消したとせず、丁寧な対応を行っている一方、SNS等のいじめなど見えづらい事案が増加したことなどが考えられるとのことです。

 

 学年別いじめの認知件数は、令和2年度から令和4年度の3年間では、どの年度においても小学校2年生が最も多くなっており、小学校3年生以降は件数が減少し、小学校6年生と中学校1年生がほぼ同程度の件数ですが、中学校2年生以降は急激に減少していきます。

 

 いじめの態様別状況は、どの校種においても「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が最も多くなっております。

 

 いじめの重大事態の件数は、令和3年度は706件でしたが令和4年度は923件となり、217件(30.7%)増加して過去最多となりました。

校種別では、小学校が390件、中学校が374件、高等学校が156件、特別支援学校が3件で、小学校が最も多くなっております。

 

◆いじめ対応における警察との連携について

 令和5年2月に文部科学省から「いじめ問題への的確な対応に向けた警察との連携等の徹底について(通知)」が発出されました。

 

このことを受けて、その直後に警察庁から「いじめ問題への的確な対応に向けた学校との連携等の徹底に関する留意事項について(通達)」が発出され、さらに令和6年1月に警察庁から発出された「学校におけるいじめ問題への的確な対応について(通達)」により、令和11年3月末まで学校と警察が連携して取り組むことが継続されることになりました。

 

 学校と警察との連携については、

◯重大ないじめ事案や犯罪行為として取り扱われるべき事案等について、警察は一義的には教育現場における対応を尊重しつつも、必要な対応をとるとしていることも踏まえ、学校は直ちに警察に相談または通報し、適切に援助を求める。

◯近年、インターネット上のいじめが増加しており、なかでも、児童ポルノ関連事犯は被害拡大防止のため、学校は直ちに警察に相談等を行い、連携して対応する。

〇犯罪に当たらないものでも、重大な被害が現に生じている、または重大な被害に発展するおそれがある場合は、警察による注意・説諭も期待できるので、学校は積極的に相談・通報を行う。

等が周知されています。

 

◆学校と警察の連携・対応の実例

 実際に学校が警察へ通報・相談して解決に向かった事案をご紹介いたします。

〇生徒が同級生に対して普段の昼食代やブランド品の購入代金の肩代わりを行うなどの金銭授受が発覚した。

加害生徒は、学校からの聴き取りに対しては否認していたが、警察が事情を聴くと一転して素直に金銭の受け取りについて認めた。

〇被害児童が加害児童から髪を切られる等の被害を受け、学校が対応に当たったが、保護者が納得出来ず警察に相談した。

警察が加害児童・保護者から事情聴取を行い、調書を作成した後、加害児童に指導を行うとともに、指導内容を被害児童・保護者に伝えた。

警察が指導を行ったことで被害児童・保護者は納得した。

〇生徒間での恐喝事案において、被害生徒の保護者が警察に被害届を提出した。

警察は被害届受領後、学校において現場検証を行い、加害生徒の逮捕に至った。

学校は、被害加害双方の保護者への連絡対応に苦慮していたところ、警察より学校が間を取り持つ必要はないという助言を受けた。

警察が両者への対応を行ったことで、学校が連絡対応を行わずに済んだ。

〇ある生徒のわいせつ画像が当該生徒の通う学校において拡散された事案において、相談を受理した警察が速やかに捜査に入り、関係生徒への聴き取りと指導を行い、事案発覚以降、画像の拡散を防ぐことができ、拡散元である生徒も特定することができた。

 

◆警察に相談または通報すべきいじめの事例

 いじめが発生した際、当該行為が犯罪行為(触法行為を含む)に該当するか否かを学校及び学校の設置者が判断することは困難なことが多いと思いますが、いじめとして捉えられるものについて、早期に警察に相談または通報を行う必要がある場合もあります。

以下は、学校で起こり得るいじめの事例のうち、犯罪行為として取り扱われるべきと認められる事案や重大ないじめ事案として警察への相談または通報すべき具体例を示したものです。

これらの具体例を参考にして対応していただければと思います。

 

〇ゲームや悪ふざけと称して、繰り返し同級生を殴ったり、蹴ったりした。〔暴行〕(刑法208条)

〇感情を抑えきれずに、ハサミやカッター等の刃物で同級生を切りつけてけがをさせた。〔傷害〕(刑法204条)

〇断れば危害を加えると脅し、性器や胸・お尻を触った。〔強制わいせつ〕(刑法176条)

〇断れば危害を加えると脅し、現金を取り上げた。〔恐喝〕(刑法第249条)

〇靴や体操服、教科書等の所持品を盗んだ。〔窃盗〕(刑法第235条)

〇自転車を壊した。〔器物損壊等〕(刑法第261条)

〇度胸試しやゲームと称して、無理やり危険な行為や苦痛に感じる行為をさせた。〔強要〕(刑法第223条)

〇本人の裸などが写った写真・動画をインターネット上で拡散すると脅した。〔脅迫〕(刑法第222条)

〇特定の人物を誹謗中傷するため、インターネット上に実名をあげて、身体的特徴を指摘し、気持ち悪い、不細工などと悪口を書いた。〔名誉棄損、侮辱〕(刑法第230条、231条)

〇同級生に対して「死ね」と言ってそそのかし、その同級生が自殺した。〔自殺関与〕(刑法第202条)

〇同級生の裸の写真・動画をSNS上のグループに送信して多数の者に提供した。〔児童ポルノ提供等〕(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第7条)

 

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典


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