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学校リスクマネジメント推進機構|学校と教職員向け危機管理相談
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夏休み明けの注意点/ 鈴木彰典 元 校長

学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。

 

さて、もうすぐ夏休みが明け、2学期が始まろうとしています。2学期は取り組むことが多く、児童生徒等の成長する姿を見る機会が多い反面、長丁場になりますので、多くのリスクを抱える学期になります。特に、夏休み明けは、学校(園)不適応、不登校(園)、自殺など、一人一人の児童生徒等の状況に応じたきめ細かな対応が求められます。
今回の学校リスクマネジメント通信は、危機管理の観点を踏まえながら夏休み明けの注意点についてお伝えさせていただきます。

 

◆不適応を起こす児童生徒等への対応

夏休み期間中、補習、部活動、文化祭準備等で学校に足を運んでいた児童生徒等は、学校のルールを守りながら過ごすことが出来ていたと思います。しかし、夏休みのほとんどを何の制約もない環境の中で生活していた児童生徒等にとっては、規則正しい生活習慣を取り戻すことに悪戦苦闘したり、煩わしい人間関係を築いていくことが面倒になったり、学校(園)生活そのものにストレスを感じたりすることで、登校(園)することに躊躇し、拒否反応を示すようになるかもしれません。また、始業式の日に登校(園)したものの、数日も経たないうちに不適応を起こす児童生徒等が出て来るかもしれません。


最初の段階で適切な対応を行うことが出来れば良いのですが、対応を誤りますと不適応から不登校(園)へと状態が重くなっていきます。
不登校(園)の態様は様々ですので一概には言えませんが、口数が減り、元気が無くなったりします。更に状態が悪くなりますと、リストカットやオーバードーズを行ったり、家庭内暴力を起こしたり、SNSで見知らぬ人とつながり、身の危険を感じる状況が生まれます。不適応を起こしたり、不登校(園)になる児童生徒等を支援することは、命を守ることにつながりますので、危機管理の観点から非常に重要です。

◆心身の健康管理への対応

日本の季節は四季があるため、季節ごとの風情を楽しんだり、味覚を味わったりすることが出来ましたが、ここ最近は、春と秋が以前よりも短くなっていると言われています。その分、夏の期間が長くなり、2学期が始まっても異常な暑さが続くことが常態化しつつあります。


暑さで体力が消耗して、夏バテなどの症状を示す児童生徒等がいたり、暑い中で活動する時間が増えるため、熱中症になる児童生徒等がいたり、熱帯夜が続くと睡眠にも影響が出て、体調不良を起こす児童生徒等がいても不思議ではありません。家庭にいる時と全く環境が変わりますので、体調管理には十分に気をつけることが必要です。


また、虐待やヤングケアラーなど、児童生徒等の心身に危害を加えたり、負担をかける家庭で夏休みを過ごした場合は、学校(園)生活をスムーズに開始することが難しい場合もあるかもしれません。1学期よりも表情が暗くなった、口数が減った、汚れている衣服を着ているなど、状況に変化が見られた時は、管理職の先生に報告・連絡・相談し、すぐに児童相談所や役所の福祉担当などと連携を図ることも必要になります。


心身の健康が心配な児童生徒等を救うことは、危機管理の観点から非常に重要です。


 

◆生徒指導上の問題行動への対応

不登校以外の生徒指導上の問題行動として、「いじめ」「暴力行為」「家出」「自殺」「薬物問題」などが挙げられますが、夏休み明けは自殺が増加する傾向があります。警察庁・厚生労働省の自殺統計によりますと、令和3~5年の児童生徒の自殺者数は、令和3年が473名、令和4年が514名、令和5年が513名となっております。9月は令和3年が37名、令和4年が57名、令和5年が54名の児童生徒が自殺で亡くなっており、憂慮すべき状況です。


今、学校現場で対応にかなり苦慮する問題が「いじめ」ではないかと思います。いじめの態様は、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句」「仲間はずれや集団による無視」「SNS上の誹謗中傷」など様々なものがありますが、対応に失敗してしまいますと長期化・深刻化することがあります。過去に当機構に寄せられた相談の中で、1学期に起きた「いじめ」が未解決のまま夏休みに入り、夏休み明けに再び起きたことがありました。また、夏休み中に学校外で起きた「いじめ」が学校でも引き続き起こり、夏休み明けに苦慮した学校がありました。どちらの場合も、保護者からの執拗なクレームに発展し、学校運営に支障を来すようになり、当機構が関わり、解決に向けてアドバイスをさせて頂きました。2学期をスムーズにスタートさせるためにも、未解決の「いじめ」を一日も早く解決し、新たな「いじめ」に迅速に対応する体制を築くことは危機管理の観点から非常に重要です。

また、家出をする未成年者が一年を通して、トー横などに出入りしたり、メン地下に通ったりすることが増えております。小学生がトー横で補導されたことがありました。特に、夏休みは開放的になりやすく、今はすぐにSNSでつながり、性犯罪などの犯罪に巻き込まれる可能性が高くなります。

インターネットやSNSの普及により、児童生徒等が情報を入手しやすくなっておりますが、一歩間違えれば、悪い大人から脅されたり、命の危険にさらされることになります。心配な児童生徒等の家庭とは夏休み中も定期的に連絡を取り合ったり、必要に応じて学校(園)から各家庭にメールなどで注意喚起を行っていると思いますが、児童生徒等を身の危険から遠ざけることは、危機管理の観点から非常に重要です。

 

◆教職員の様々な問題への対応

全国的に教員不足の状態が続いており、今年度も厳しい学校運営を強いられている学校(園)もあることと思います。最近は、若い教職員の方の人数が増えており、年度途中に産休・育休を取得する方の人数が増えております。また、年度途中に病休(病気休暇・病気休職)を取得される方も増え、文部科学省の調査によりますと、令和4年度に精神疾患で病気休職を取得された方が過去最多になりました。しかし、教員不足のため、代替の教職員の方が見つからず、学校(園)内で補いながら学校運営を行わなければならない状況は珍しいことではならなくなりました。学校(園)現場は様々な問題が起きますので、ただでさえ負担が大きいと思いますが、教職員が欠員になりますと、更に負担が増え、教職員の健康が非常に心配です。夏休み明けの教職員の健康状況の把握は危機管理の観点から非常に重要です。


この他にも、学級経営や部活動指導、保護者対応などでトラブルが発生することがあります。教職員の様子を丁寧に観察するとともに、教職員から相談を受けた場合には、管理職の先生を中心にきちんと対応することが必要です。夏休み明けは様々なトラブルが起きやすくなりますので、一人の教職員で抱えるのではなく、チーム全員で対応することは危機管理の観点から非常に重要です。


夏休み明けは、児童生徒等並びに教職員に対する心配が尽きないと思いますが、夏休み明けに想定されるリスクを洗い出し、危機の発生頻度を低くする手立てを講じながら2学期をお迎えください。当機構は、引き続き、2学期も皆様の学校(園)の支援に努めさせて頂きます。

 

 


※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。

 編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典

 

 


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