道路交通法の一部改正/ 鈴木彰典 元 校長
学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。
さて、11月1日から道路交通法が一部改正されましたが、特に自転車乗用中の罰則が強化されました。今回の学校リスクマネジメント通信は、全国の過去3年間の自転車乗用中の交通事故の状況や改正内容の概要などについて、お伝えしたいと思います。
◆自転車乗用中の事故状況について
年齢層別死傷者数が多いのは、10~24歳となっています。この年齢層の内訳は以下の通りです。【表1】
次に、事故類型別交通事故件数は、以下の通りです(単位は件)。【表2】
車両相互で多いもの3つは、出会い頭、左折時、右折時です(単位は件)。【表3】
次に、法令違反別交通事故件数で多いもの4つは、安全不確認、動静不注視(※)、交差点安全進行、一時不停止です(単位は件)。【表4】
※動静不注視とは、周りの車や人の存在や動きに気がついていながら、危険はないと判断し、他の車や人の動静の注視を怠ること。
なお、法令違反の交通事故件数は全体の約2/3を占めております。【表5】
次に、相手当事者別交通事故件数は、以下の通りです(単位は件)。【表6】
【表1】より、自転車乗用中の交通事故で多い年齢層は小学校、中学校、高等学校、大学、専門学校に通っている児童生徒等になります。特に、15~19歳の年齢層は自転車乗用中の交通事故の2割弱を占めておりますので、繰り返しの注意喚起が必要となります。
また、【表2】や【表6】より、自転車乗用中の交通事故は車両相互が多くなっております。特に、相手当事者が自動車の件数が非常に多く、命に関わる重大事故につながる危険性がありますので、注意が必要です。そして、【表5】より、法令違反をした場合は、しない場合よりも交通事故件数が約2倍になりますので、法令を守ることが事故防止につながると思います。
さらに、【表3】や【表4】より、どのような時に交通事故が起きることが多いか分かると思います。自転車の乗り方について、繰り返し、注意喚起が必要です。
各都道府県の警察からも交通事故統計が発表されております。それらも参考にして頂くと、地域の実態を踏まえた対策を立てることが出来るようになると思います。
(警察庁交通事故統計参照)
◆道路交通法の一部改正内容
11月1日から改正道路交通法が施行されましたが、以下のことが新たに設けられることになりました。
〇自転車運転中の「ながらスマホ」の禁止・罰則化
従来は、自転車等の運転中において、携帯電話を通話のために使用し、または携帯電話に表示された画像を注視する、いわゆる「ながらスマホ」は禁止されていませんでしたが、「ながらスマホ」が自転車事故の主要な原因になっていることに鑑み、今回、停止している間を除いて、新たに禁止になり、罰則が強化されました。
自転車の運転中に「ながらスマホ」をした場合は「6か月以下の懲役または10万円以下の罰金」が処されます。また、自転車運転中の「ながらスマホ」により交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されます。
〇自転車の酒気帯び運転に対する罰則の新設
従来は、自転車を含む軽車両については、酒気帯び運転に関する罰則の対象外とされていましたが、今回、新たに罰則の対象になりました。
自転車の酒気帯び運転をした場合は「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。また、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に自転車を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合は「自転車の提供者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます。さらに、自転車の飲酒運転をするおそれがある者に酒類を提供し、その者が自転車の酒気帯び運転をした場合は「酒類の提供者は2年以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されます。そして、自転車の運転者が酒気を帯びていることを知りながら、自転車で自分を送るよう依頼して同乗し、自転車の運転者が酒気帯び運転をした場合は「同乗者は2年以下の懲役または30万円以下の罰金」に処されます。
〇自転車運転者講習の受講の義務
交通の危険を生じさせるおそれのある一定の違反行為(危険行為)を繰り返す自転車運転者に対して、「自転車運転者講習」の受講が義務づけられていますが、「ながらスマホ」と「酒気帯び運転」についても、今回、同講習の対象となる「危険行為」に追加されることになりました。自転車運転者講習の受講を怠ると「5万円以下の罰金」に処されます。
◆過去の裁判事例より
交通事故を起こした自転車運転者やその家族に1億円近くの損害賠償を命じた判決事例が過去にあります。加害側になると、人生が全く変わってしまいます。児童生徒等だけではなく、教職員の方々も十分に気をつけて頂きたいと思います。
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。
編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典