教育職員の状況について/ 鈴木彰典 元 校長
学校リスクマネジメント推進機構の鈴木彰典です。私は過去に校長経験が13年あり、マスコミが注目していた教育困難校の立て直しを任されてきた経歴もございます。このような学校では報道される内容と実情が全く異なることもあるのですが、様々な経験が今の学校現場の支援に活かされていると感じております。
さて、ここ数年、教員志望者が減少し、教員採用試験の倍率が低下するなど学校教育を取り巻く環境は、より一層厳しさを増しております。今号では、文部科学省の調査結果より、最近の教育職員の状況についてお伝えしたいと思います。
◆教員採用試験の倍率
令和5年度公立学校教員採用試験の倍率は、小学校が2.3倍、中学校が4.3倍、高等学校が4.9倍、特別支援学校が2.4倍、養護教諭が7.4倍、栄養教諭が8.8倍、全体で3.4倍となっております。平成10年代は、教員採用試験の倍率が非常に高く、校種別に最も高かったのが、小学校が12.5倍(平成12年度)、中学校が17.9倍(平成12年度)、高等学校が14.2倍(平成19年度)、特別支援学校が5.5倍(平成13年度)、養護教諭が14.2倍(平成11年度)でした。全体としては13.3倍(平成12年度)が最も高く、それ以降は倍率が低下をたどるようになりました。栄養教諭は、平成19年度から採用され始め、最も高かったのは10.4倍(平成24年度)でした。
倍率が低下したのは、団塊の世代が退職して採用数が増えたこともありますが、学校現場は大変だというイメージが広がったことなども要因として挙げられると思います。新年度の開始から教員不足になり、厳しい学校運営を強いられている学校が多いのではないでしょうか。
◆病気休職者(等)の推移
病気休職者(教育職員)の人数が多くなっております。過去5年間の人数は、以下の通りです。【表1】
また、病気休職者及び1ヶ月以上の病気休暇取得者(教育職員)〔以下、病気休職者等〕も多くなっております。過去5年間の人数は、以下の通りです。【表2】
【表1】【表2】より、1ヶ月以上の病気休暇取得者(教育職員)〔以下、病気休暇者〕の中にも精神疾患者の方が多くいることが分かります。【表3】
※【表3】の人数は【表2】-【表1】で求められます。
【表1】【表2】より、病気休職者及び病気休職者等と精神疾患者は令和2年度に減少しましたが、令和3年度から増加しております。また、【表3】より、病気休暇者並びに精神疾患者は増加の一途をたどっております。
文部科学省が各教育委員会に尋ねたところ、増加している要因として、教員間での業務量や仕事内容のばらつき、保護者からの過度な要望や苦情への対応、コロナ禍で児童生徒や教職員間でのコミュニケーションの取りずらさなどが挙げられるとのことです。
◆懲戒処分の推移
全国的に教育職員の不祥事が後を絶たない状況が続いております。過去3年間に懲戒処分(教育職員)を受けた人数は、以下の通りです。【表4】
※その他は、児童・生徒への不適切な指導等、公費の不正執行又は手当等の不正受給、傷害・暴行等及び刑法違反等によるものです。
最近増加しているのが性犯罪・性暴力等による処分です。性暴力・性犯罪等とは、児童生徒性暴力等又は性犯罪・性暴力及びセクシュアルハラスメントをいいます。令和4年度の性犯罪・性暴力等に係る懲戒処分の状況は、免職が153名、停職が41名、減給が17名、戒告が8名、合計が219名となり、約7割が免職となっております。
また、過去3年間の懲戒処分の状況は、以下の通りです。【表5】
【表4】【表5】より、不祥事で懲戒処分を受ける教育職員が年間に700名以上いることが分かります。内容は様々ですが、何か起きた場合には児童生徒への説明、臨時保護者会の開催、マスコミ対応、教育委員会への報告等により、当該校は対応に追われることを余儀なくされたことと思います。また、【表5】より、令和4年度は免職した教育職員が200名以上おりましたが、代替職員が見つからず、少ない人数で学校運営が非常に厳しくなったのではないかと推測いたしております。
◆その他
最近は、若い教育職員が増えておりますので、産前産後休暇・育児休業等を取る方が多くなっておりますが、教員不足のために代替教員が見つからないということも起きております。
今号では、公立学校の状況についてお伝えいたしましたが、国・私立学校でも同様の傾向にある学校は少なくないと思います。
今や学校が置かれた状況は厳しさを増しておりますが、当機構は、学校のトラブル対応(未然防止と事後対応)の支援を行っております。何かお困りのことがございましたら、問題解決に向けてのご助言をさせて頂きますので、すぐにご連絡をお願いいたします。
※この記事は当機構が制作・発行している「学校リスクマネジメント通信」をWEB版として編集したものです。
編集者 元公立小学校・中学校 校長 鈴木彰典